Medical Essays

日々、考えることの覚書です。

ACP(アドバンス・ケア・プランニング)について考えてみた。

ACP、アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

昨年11月には、『人生会議』という愛称がつけられましたが、まだあまり浸透していないように思います。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02615.html

 

ACPは、“将来の意思決定能力の低下に備え、今後の治療・療養について患者・家族・医療者が、あらかじめ話し合うプロセス” と定義されています。

具体的に、

 脳卒中心筋梗塞、肺炎などのため救急車で病院に運ばれたり、癌や心不全、老衰(!?)などで闘病したりすることを想定し、

 病気による意識もうろう状態や、認知症による判断力の低下に備え、

 どのような治療を受けたいか・受けたくないかをあらかじめ相談するプロセス

と言えば、すこしわかりやすいでしょうか。 

 

これまで、日本の医療の現場では、

・心停止、呼吸停止に陥った場合に、心肺蘇生術の実施を希望するか否か

・食べられなくなった場合に、胃瘻増設を希望するか否か

・癌と診断された場合に、告知を希望するか否か

といった、医療内容に関する詳細な指示(リビング・ウィル)や

・(患者さんの立場で)いざというときは、子供に任せる

・(医療従事者の立場で)方針決定の際のキーパーソンは、配偶者である

というように、代理人をあらかじめ決めておくこと(代理人指示)など

事前指示、アドバンス・ディレクティブ(Advance Directives; ADs)を明確にすることに重点が置かれてきたように感じます。

 

そのため医療従事者のうちでも、事前指示(ADs)を得ることに重点が置かれ、ACPの本質であるプロセスが軽視されていないか、懸念されます。

 

私自身は、ACPを主に行うのは患者さんとその家族であり、ACPの最も重要な目的は価値観の共有だと考えています。

 

死に関する話題は、日本人にとってタブー化しているため、ACPがなかなか普及しないのかもしれませんが、『望ましい死の迎え方』について、大事な人と価値観を共有することは、本人にも、残された人たちにも、後悔の少ない納得した最期につながると感じられます。

 

ライフイベントや年齢の区切り、健康診断の後など、大事な人と一緒にACPをしてみてはどうでしょうか?

 

今回の話題は、以下の書籍を参考にしました。

 

 

本人の意思を尊重する意思決定支援: 事例で学ぶアドバンス・ケア・プランニング

本人の意思を尊重する意思決定支援: 事例で学ぶアドバンス・ケア・プランニング